地域食文化研究 · 文献横断レポート
「うすくち」はいつ、どこで意味を持ったのか
江戸期料理書の語の出現と地域性をもとに、現代の商品名を過去へそのまま投影しない。
問い:古い「うすしょうゆ」は今の商品と同じか
醤油研究は、料理書中の「うす」「薄」「淡」などの表記を数え、関西に多い傾向を報告している。同時に、現在の「うすくちしょうゆ」という表記は対象史料には見られない。
ここから言えるのは語と利用の地域性であり、現代商品と成分まで同一だということではない。
方法:名称、成分、用途を別の資料にする
歴史的な名称は同じでも配合が同じとは限らず、逆に配合が近くても名称が違うことがある。料理書の語形、レシピ中の量、醸造史の資料を混ぜずに比較する。
本レポートでは料理書研究・酢研究・煎り酒研究を並べ、液体調味料の役割が一語では読めないことを示す。
結論:地域性はラベルではなく関係で読む
地域の味を調べるには、商品名を遡るより、誰がどの料理に何をどう記したかを見る方が確かである。
料理書の著者所在地は読者や流通範囲と必ずしも一致しない。この限界を明示し、地域文化を固定的な性質として語らない。
参考文献
APA第7版形式。本文中の角括弧の番号は、この一覧の文献番号に対応します。直接引用は行わず、研究の方法・結果・限界を要約しています。
- Aoyama, S., Katayose, M., Kawarazaki, Y., Konishi, H., Sakagami, A., Sawada, M., Shigaki, H., Tominaga, S., Masai, C., Yamamoto, N., Yamamoto, Y., & Yoneda, Y. (2004). 関西のうす味・うす色食文化の形成とうすくち醤油の利用に関する研究(第1報): 江戸期の料理本に見るしょうゆの出現数と地域性. 日本調理科学会誌, 37(1), 21–34. https://doi.org/10.11402/cookeryscience1995.37.1_21
- Yanagihara, N., Maehashi, K., Akuzawa, S., Hosaka, M., & Koizumi, Y. (2021). 江戸期における日本料理への酢の使われ方. 日本調理科学会誌, 54(3), 132–140. https://doi.org/10.11402/cookeryscience.54.132
- Tominaga, S., Maeda, T., & Kishida, E. (2012). 江戸期の調味料「いり酒」の嗜好特性:成分特性と官能評価. 日本調理科学会誌, 45(1), 37–42. https://doi.org/10.11402/cookeryscience.45.37